とある官女の日記 夏の終わりの思ひ出
夏の暑さがまだ残る
今日、この頃でございます。
「夏休み」なる休暇を
京の都でお過ごしになられた
とても愛らしい姫君たちが
いらっしゃいました。
妹君は源氏物語がお好きで
細長の衣を着てみたいとおっしゃって
桜色の小袿に葡萄染めの細長を
お召しになりますと
たいそうお喜びになられて
姉君は夏の青空のような
爽やかな装いで
かの物語の花散里のよう
父君も母君も
楽し気に遊びに興じられる
姫君たちのお姿を
微笑ましく見守っておられ
夏の終わりに
良き思ひ出となったようでございました。
令和五年 菊月