とある官女の日記 ~初夏の杜若の姫君~
遠い異国の地より
姫君が御屋敷をご訪問されました
杜若の衣をお召しになり
艶やかなお姿が
大変美しゅうございました
姫君の杜若の衣を見ておりますと
大田の沢の杜若が
たいそう素晴らしいとの噂を
思い出しました
かの歌人・藤原俊成様も
「神山や 大田の沢の かきつばた
深き頼みぞ 色にみゆらむ」
と、詠まれたほど
美しい杜若に思いを馳せ
京の初夏をお過ごしになられた
ご様子でございました
令和五年 水無月